私たちの腸の中で暮らす腸内細菌を知って、 自分の暮らしを見つめなおそう
自分の腸について知ろう!

腸とのかかわり
19世紀に西洋医学が日本に広まるまでは、漢方医学の「五臓六腑」という考え方が一般的でした。これは現代の臓器分類とは異なり、心と体のつながりや哲学的な視点も含んでいます。その影響もあり、日本語には内臓に関する表現が多くあります。たとえば「腹を決める」「腹を抱えるほど笑う」「腸が煮え返る」「断腸の思い」等。こうした表現からも、昔の人々が腸と感情のつながりを自然と意識していたことがわかります。


「第二の脳」と呼ばれる腸
腸はただ消化するだけの臓器ではなく、自ら判断して動く“かしこい臓器”です。たとえば、体に悪い菌が入ると、腸に集まった免疫細胞(全体の60~70%)が中心になって守ってくれます。体を元気にするホルモンの多くも腸で作られ、全身に影響を与えています。さらに、自律神経の約半分が腸に集中しており、他の臓器の働きも調整しています。こうした理由から、腸は「第二の脳」と呼ばれ、健康を保つうえでとても重要なのです。

腸のはたらきと場所
食べたものは、口から胃を通って細かく消化され、小腸へ送られます。小腸は栄養や水分を吸収する、エネルギー補給の要となる臓器です。大腸に囲まれ守られたお腹の真ん中にあり、消化液を使って栄養を取り込みます。その後、大腸では残った水分やミネラルを吸収し、残ったカスを便としてまとめていきます。大腸には多くの腸内細菌がいて、常に残りカスの代謝が行われています。その過程で有害なガスも発生しやすく、病気の原因にもなりやすい場所とされています。

大腸は「病気のデパート」
日本では、大腸がんは死亡率・罹患率ともに高い病気のひとつです。特に最近では、食生活の欧米化や運動不足等生活習慣の変化によって、大腸がんのリスクが高まっていることが問題視されています。大腸は、「有害物質が溜まりやすい場所」であることで、発がん物質や細菌の毒素が生まれやすく、常に病気の芽と隣り合わせの環境です。近年では、腸内細菌と健康の関係も以前より研究が進み、腸内環境が乱れることで、全身のさまざまな病気に影響を及ぼすことがわかってきています。


腸内細菌ってなんだろう?
「腸内細菌」という言葉はいまでは広く知られていますが、本格的に注目され始めたのは1980年頃からです。腸内細菌の主な役割は、大腸での「便の品質管理」です。大腸の中には500~1000種類以上、なんと40兆個以上の腸内細菌が存在しています。ただし、その多くは培養して調べることが難しく、まだ正体がよくわかっていない菌も多く含まれています。


これまでの研究では、腸内細菌の構成は以下のように考えられています。
- ・善玉菌:約20%(体に良い働きをする)
- ・悪玉菌:約10%(有害な働きをする)
- ・日和見菌:約70%(善玉菌が多いとおとなしく、悪玉菌が増えると悪い働きをする)
腸内細菌のバランスは人によって異なりますが、善玉菌が優勢な環境では、免疫力が高まり、病原菌の繁殖を防ぎ、便秘や下痢の予防にもつながります。悪玉菌が増えてバランスが崩れることで、大腸をはじめ、体にさまざまな不調や病気を引き起こします。
腸内環境の要「酪酸産生菌」
長寿の人が多い地域の高齢者の腸内を調べたところ、「ビフィズス菌」だけでなく、「酪酸産生菌」が多く存在していることがわかりました。
酪酸産生菌は「酪酸」という成分を作り出し、腸内を弱酸性に保つことで、ビフィズス菌などの善玉菌が住みやすい環境を整えてくれます。
酪酸には以下のような働きがあります。
- ・腸のはたらきを整える
- ・肥満やコレステロールの増加を防ぐ
- ・悪玉菌の増殖を抑える
- ・ミネラルの吸収を助ける
この酪酸を作る酪酸産生菌を増やすには、日々の食事で食物繊維をしっかりとることがとても大切です。

食物繊維は「2対1」で食べよう!
腸内環境を整えるには、食物繊維が欠かせません。
食物繊維には2つの種類があり、それぞれ役割が違います。
-
不溶性食物繊維:水に溶けないタイプ。
腸を刺激して蠕動運動を活発にし、腸内の不要なものを絡めとって外に出します。
⇒豆類、きのこ類、野菜の皮や根菜に多く含まれます。 -
水溶性食物繊維:水に溶けるタイプ。
血糖値の急上昇やコレステロールの吸収を抑え、便に水分を与えて排泄をスムーズにします。
⇒海藻類、果物、オクラや里いもなどに多く含まれます。


どちらも大切ですが、理想的なバランスは「不溶性:水溶性=2:1」です。
このバランスで食物繊維をとることを意識すれば、腸の調子も整いやすくなります。
毎日の食事に少しずつ取り入れて、腸から元気な体を目指しましょう!
個性が光る腸内細菌
私たちが初めて腸内細菌を取り込むのは、出産時です。お母さんの産道を通るときに腸内細菌を受け取り、それが赤ちゃんにとっての「最初の腸内細菌」となります。胎内は無菌なので、このタイミングで腸内環境の個性が形づくられます。帝王切開で生まれた場合は、産道由来の細菌は受け取りませんが、外の世界との接触を通じて独自の腸内細菌を獲得していきます。これもまた、その人ならではの「腸の個性」です。 ただし、腸内細菌の個性は「生まれつき」だけで決まるものではありません。食生活や生活習慣によって変化させることができるのです。自分の腸内環境がいまどうなっているのかを意識しながら、改善できる部分があれば、日々の食事やライフスタイルを見直すことが、より良い腸内環境づくりにつながります。
腸年齢をチェックしよう!
自分の腸内環境が気になってきた方は、まずは「腸年齢チェック表」で今の腸の状態を確認してみましょう。
チェックの数が多いほど、腸内環境が乱れているサインかもしれません。
どのくらい当てはまったかによって、食生活や生活習慣の見直しポイントが見えてきます。
腸年齢チェック表
結果いくつチェックがつきましたか?
-
0個
善玉菌が優勢。
腸年齢は実年齢より若い。 -
1~2個
善玉菌が優勢。
腸年齢は実年齢と同じ。 -
3~5個
腸年齢は実年齢よりやや上
生活習慣を見直しましょう腸年齢は実年齢よりやや上。生活習慣を見直しましょう
-
6~8個
悪玉菌が優勢。
不調をきたす恐れがあります。 -
9個
悪玉菌が優勢。
腸年齢は実年齢+30歳。
毎日のちょっとした心がけで、腸はきちんと応えてくれます。
まずは「知ること」「気づくこと」からはじめて、腸内細菌と仲良く過ごす生活を目指していきましょう。