地球温暖化で「海苔養殖」がピンチ!?

水温上昇、赤潮、魚の大量死… 地球温暖化で「海苔養殖」がピンチ!

水温上昇、赤潮、魚の大量死…
地球温暖化で「海苔養殖」がピンチ!

生産量激減の危機に!海苔が抱える課題

種付けから出荷まで大切に。海苔の養殖方法

種付けから出荷まで大切に。
海苔の養殖方法

自生している海苔は厚みがあり、歯ごたえも硬く、磯の香が強いものが多いです。しかし、こういった海苔はごく一部の地域でしか流通できません。
農家さんが野菜を育てるように、海苔の漁師さんも種付けから出荷まで大切に育てる必要があります。

  • 水深が浅いところで育てる「支柱式

    支柱式は言葉の通り、漁師さんが支柱を海に打ち込み、その支柱と支柱の間に海苔網を張っていく養殖方法です。海面が上がったり下がったりすることで、海苔が水につかったり(海苔が成長する)、海苔が海水から出て乾燥したりする(海苔に付着するケイソウ等を取り除いたり、海苔の芽を強くする)ことが特徴の養殖方法です。

    [有明で支柱式の海苔養殖を営む「有明の芽吹き」生産者・田中さんのインタビューはこちら]
    https://jasonwinterstea.jp/blogs/interview/interview-202310
  • 水深が深いところで育てる 「浮き流し式

    海苔網が海面にプカプカと泳ぐように張られています。水深の深いところでも養殖できるような仕組みになっています。浮き流し式で育てられた海苔は海水に浸かったまま収穫されます。そのため、黒くて艶のある海苔に仕上がることが多いと言われていますが酸処理の問題があります。

「農薬」と同じ!?海の生態系を崩す「酸処理」とは

「農薬」と同じ!?
海の生態系を崩す「酸処理」とは

「浮き流し式」が考案され、沖合まで養殖域が広がりましたが、本来の生育環境でないため雑海藻を除くための「干出」ができず、雑藻被害や病害が増えました。

その対策が「酸処理」と呼ばれる養殖中の海苔網を海から引き上げ、酸性の液に漬けてから戻す方法で、現在ではほとんどの海苔養殖で取り入れられています。野菜でいうところの「農薬」と同等の役割を果たします。

しかし、使用する処理剤の成分や使い方によっては食品としての安全性に懸念があり、漁場環境の悪化にもつながります。

見た目は黒々と美しい海苔ですが、海苔本来の味と香りは損なわれます。本来の海の生態系や美しい姿を守り続けるためにも、「本物の海苔」を食べ続けたいですね。

「海を育む」海苔と、地球温暖化が与える影響

「海を育む」海苔と、
地球温暖化が与える影響

海苔の食べ物は動植物が分解された時に出る窒素・リン・ケイ素等の「栄養塩」です。栄養塩は増えすぎると赤潮や魚の大量死など様々な問題を引き起こします。

海苔は栄養塩の養分を吸収し、光合成で二酸化炭素を酸素に変えるので、海を浄化し、温暖化防止にも貢献しています。

ところが、海苔は水温が24℃以下の環境で養殖を行うため、現在温暖化の影響で海苔の漁獲量が年々減少傾向にあります。

美しく多様な生態系が暮らす海を守るためにも、地球温暖化の解決を目指すことが重要です。

全国各地から大手メーカーが殺到!福岡有明の海苔

全国各地から大手メーカーが殺到!
福岡有明の海苔

全国の海苔の生産量の40%以上を占めている九州のなかでも、福岡県柳川大川地区は、最も佐賀県寄りに漁場をもつ産地で、毎年海苔の旬の時期になると、入札時には全国から大手メーカーが殺到しています。

そのひみつは最大6mもの干満差を利用した海苔養殖。
日本の海では差が大きくても1~2mで、6mもの干満差は世界有数。満潮時は海水の栄養を、干潮時は太陽の光をたっぷり吸収することで、健康的な海苔が育ちます。

漁期前には柳川大川地区の海苔漁師さんたちが率先して海上清掃を行い、不純物の少ない美味しい海苔作りを行っています。